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しおひめの「和文化おもてなし」~人と文化がつながる時間~

 

第五回目「みなづき祭り」

 

 今回は、東北・山形県鶴岡市のお祭り「みなづき祭」を紹介します。みなづき祭は、毎年六月三十日に行われる大祓いの行事です。関西や関東地域では「夏越(名越)の祓え」と呼ばれています。大祓いの行事は、年に二回行われます。六月晦日にあたる六月三十日と、お正月前の大晦日、十二月三十一日に行われています。一般的に神社で行われているのは、境内に飾られた「茅の輪」というものをくぐり半年間の災厄を祓う行事です。

 みなづき祭は、山形県鶴岡市にある椙尾神社にて行われます。茅の輪くぐりはなく神輿に添えられた茅の輪と神社に納められた人形(ヒトガタ)を海に流します。ヒトガタとは、人のかたちの白い紙に息を吹きかけ、体をさすり穢れを紙に移したものです。その後、海から神様を松明で迎える行事です。火と水により大祓いが行われます。火と水は互いに剋する存在でありながら、穢れを祓う意味では大変重要な役割を担っています。火と水は、私たち人が生きて行くために欠かせないものとなっています。

 

茅の輪が添えられた神輿 迎え火 松明まつり

茅の輪が添えられた神輿

迎え火 松明まつり

 

 椙尾神社は、主祭神に積羽八重事代主大神(えびす様)が祀られている神社です。朝八時、祭りの関係者(太夫)が集まり神社にて神輿の祈祷が行われます。男性だけで執り行われる神事ですが、地域の方々のご厚意で神事を観ることが出来ました。神事の際には、お神酒・赤飯・漬物三種(きゅうり・大根・メロン子)、神社に献上された鯛の一尾を皆で分けて頂きます。九時には神輿が神社出発し神社の氏子と呼ばれる地域を廻ります。そして事前に各家庭に配られたヒトガタが神輿に納められます。午後四時には、神社から湯野浜海岸の側にある宮沢という地域に神輿が移され大祓いの神事(祈祷)が行われます。ここには潮掛岩と呼ばれるもので、椙尾の神様(えびす様)が釣りをされたと伝えられる岩の塔です。神輿にのせた茅の輪と、神社の氏子によって納められたヒトガタの祈祷が行われます。その後、宮司の方とお付きの太夫の方々により、茅の輪とヒトガタが船に乗せられ沖に出ます。穢れを海の底に沈め流すことで、全ての穢れがなくなるという伝えにより、船から茅の輪(神亀)とヒトガタが納められた束(スゲコモ)が海に流されます。祓いと浄めの儀式です。船には限られた人だけが乗ります。今回、地域の方にお声掛けを頂き水着着用で私も乗船することが出来ました。船の上では、先導する太夫の方が魔よけの意味を持つ天狗の面を掲げていました。夕陽が海を照らす中で、船から茅の輪とヒトガタが海に流される場面を観た時、人の力では及ばないものがあることを感じました。船が港に到着する頃、夕方六時を示すサイレンが海岸沿いに響きわたりました。

 

山形の伝統駄菓子「からから煎餅」 茅の輪と ヒトガタが納められた束

海岸で行われる大祓いの神事

茅の輪と ヒトガタが納められた束

 

 夜には、海岸から神社に神様を迎えるため 神社に入る手前の約一キロメートルの道路一帯にて、神様を迎える松明まつりが行われます。明かりの代わりに松明が灯されます。迎え火です。この日、各家庭の玄関先に家紋入りの提灯が掲げられます。

 松明を灯すための道具として、菜種がら(菜の花の茎を乾燥させたもの)が使われます。菜種がらは、燃えやすく火の粉が高く上がります。松明まつりを観ている方も火の粉や煙が近くを通り過ぎるので、手ぬぐいやタオルを顔に巻いて参加します。

 椙尾神社がある鶴岡市大山・馬町地域では、「子供が松明を持って走ると丈夫に育つ」という言い伝えがあることから、親子連れで参加する方を多く見かけました。松明まつりの火と煙は、地域の穢れを焼き払い清める働きがあるとされています。多くの人により焚かれた松明が通り過ぎた後、地域の若衆と呼ばれる男性により担がれた神輿が神社に戻り、祭りが終わります。

 人の生活が中心となる時代の中で、みなづき祭りは、火と水によって人が生きる場所を清浄にします。祭りに参加し改めて、一年の行事が行われる意味を考える良い機会になりました。元来日本の生活は、月の動き、四季を中心に生活が営まれていました。今では、人の生活に暦(休日など)や行事が作られるようになりました。正確には行事が行われる時間も決められていました。私達が過ごす環境は、人が作り上げたものでないことを知ることが必要だと思います。月や星の動き、四季の移り変わりがあって初めて人の生活があります。それが、自然と調和して生きることだと感じています。星が天に舞う季節、どうぞ皆さま夏の夜空を眺めてゆったりとした時間をお過ごしください。

 

 

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塩田 紀久代 (しおひめ)


*和文化おもてなし研究所 代表
*伝統文化むすび使・和文化おもてなしコーディネーター

 

1974年 山形県・鶴岡市出身。
幼い頃より父の影響を受けて、山村の年中行事に親しむ。
2006年 母の病気・他界を機に、約12年携わった
ショービジネスのマネージャー業からホテル・旅館業に天職する。
旅館の新規開業・再生事業を行う、おもてなし部署に所属する。
箱根・強羅温泉、静岡・修善寺温泉にて旅館業全般に携わる。
帰郷後、ホテルに入社。マネージャー職となる。
半年後には、ホテルが「ハイクラスの宿」となる。

 

和の文化を通して人と地域をむすび 社会にたくさんの笑顔をつくることを理念に
2012年10月「和文化おもてなし研究所」(商標登録)を開設。
子どもの着付け、女性のしぐさ。季節の年中行事を通して、
暮らしに生きるおもてなしの提案を行っている。
受け継がれた和の文化とおもてなしの心を未来につなぐ活動として
「見返り美人になって和のおもてなしを学ぼう」講座を開講。

 

2013年10月公開予定 映画「おしん」の制作に所作指導として映画撮影に携わる。

 

 

ホームページ http://wabunka-omotenashi.jimdo.com/

映画「おしん」公式サイト http://pr.livedoor.com/movie/oshin/